アスベスト被害者のAさんを思う

11/6/17

Aさんは,還暦を過ぎている。
アパートに一人で暮らしている。
部屋には,経済的理由で別れた奥さんの写真がきれいに飾られている。
とても,Aさんの体では養うことができなくなって,泣く泣く別れたのだ。
今でも,電話と手紙のやりとりを続けている。
二人はまだ愛し合っているのだ。

Aさんは,中学校を出てから40年以上も保温工の仕事をしていた。
有名なビルや,デパートといった,大きな建物の天井裏がAさんの職場だった。
その中をはいずり回り,一年中カッターでアスベストの入った板を切り刻んだ。
おまけに四方八方からアスベストがたっぷり入った粉じんが押し寄せてきた。
苦しくても続けないと生きていけない。
Aさんは思いきり汚れた空気を吸い込んだ。
おかげで,Aさんの肺はアスベストがからみついた石の肺になってしまった。

「汚くて,辛い仕事だったから,イイオモイをした頃もあったのですよ。」とAさんは言う。
イイオモイだなんて,アスベストを売りまくって稼いだ人たちから見たら比べものにならないのですよ。
Aさんが味わったイイオモイなんて本当にささやかなものですって。

Aさんは,アパートの2階に住んでいる。
ベットは,部屋のロフトにあって,はしごでよじ登らないと眠りにつけない。
Aさんは,酸素吸入の機械を手放すことができない。
アパートの階段を上がるときは酸素ボンベを抱えないと駄目だ。
ロフトのベッドまであがっていくことが辛い時は下のこたつで眠る。

それでも,Aさんはどこにでも行く。
アスベストで苦しんだり泣いている仲間や遺族がいると聞いたらどこでも行く。
酸素吸入器をもって埼玉・東京・横浜はもちろん大阪でも神戸でも。

私がAさんにお元気ですか。と言おうとすると,
いつも先にAさんから,しっかりした声で言われてしまう。
「岡田さん。元気ですか。」
元気をもらっているのは,Aさん。私の方ですよ。  
 岡田まさき

投稿者 musashino-law | 2011年6月17日 00:00

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